花粉症

春になると、多くの方々が苦しめられる花粉症は、やっかいな病ですよね。
花粉症は花粉に感作された個体が原因花粉に暴露されることにより発症するI型アレルギーによる疾患で、花粉の飛散時期に、毎年ほぼ一致して症状が出現しはじめ、花粉の飛散量の増加と共に症状が増悪し、その時期が過ぎると症状が消失するのが一般的です。
花粉症の原因となる植物はスギ、ヒノキ、サワラなどの樹木、カモガヤ、オオアワガエリ、ナガハグサなどのイネ科植物、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラなどの雑草類が主になります。
花粉症は鼻アレルギー*、アレルギー性結膜炎*、気管支喘息*のさまざまな組み合わせで引き起こされるとされており、大量の水性鼻漏、鼻閉、くしゃみ、鼻内そう痒などの鼻アレルギーの症状、眼結膜の発赤、そう痒、流涙、眼瞼腫脹などのアレルギー性結膜炎の症状、呼吸困難、喘鳴、せきなどの気管支喘息の症状が挙げられます。
症状の発現メカニズムは、鼻粘膜、鼻汁中に存在するマスト細胞(肥満細胞)、好塩基球の細胞膜上の特異的IgE抗体と花粉抗原との反応の結果遊離されるヒスタミン*、slow‐reacting substance of anaphylaxis(SRS‐A*;ロイコトリエン*C4、D4、E4)などの化学伝達物質により症状が発現するとされております。
一般的な治療方法は、症状を抑制するための薬物投与や、マスク、サングラス、着衣の花粉をできるだけ落とすなどの予防的処置になります。
ただし、ステロイドを初めとした薬物には副作用があることを忘れてはなりません。
さて、これからは、花粉症に対してどのように鍼灸を用いて治療を行うのかを解説いたします。
実は、漢方には花粉症と言う言葉がありません。
しかしながら生体が、本来必要がないのに、過剰に防衛反応を示すような場合に、それをコントロールするための治療方法は存在します。
上記にありますように、花粉は本来敵ではないのに、免疫反応が引き起こされる、いわゆる誤作動「異常な防衛」の状態があると考えるのです。
では、なぜ「異常な防衛」が現れるのでしょうか?
これを漢方理論で分析するためには、例えばポピュラーなスギ花粉では、立春から清明(2月から4月初旬)に症状が激しくなるのですが、その時になぜ、生体が過剰な防衛反応を示すのかを、考えなければなりません。
患者さんの今という時間を正確に認識するためには、過去がどのようであったかを、理解しなければなりません。
少し説明を加えますと、冬は厳しい寒さから身を守るために、体内の環境「陰」を安定化し、外側「陽」の活動を沈静化させて、体力が減らないように生体は活動レベルを調整しています。
春は、万物が温暖の気を得て、活動的になり、縄張りを主張し始め、空間に出現する季節です。
例えば、植物が芽吹き、虫が土から現れ、冬眠していた動物が穴倉から外に出て、営みを活動的なモードに変化させていきます。
人も自然の摂理の中で生きておりますから、冬季に抑制的に働いていた生理活動を、気温上昇と共に、活発化させなければなりません。
漢方理論的には沈静化していた血を、活動的にしなければならないということになります。
ただし、活動的であるだけでなく、適切な働きができなければ当然意味がありません。
そこから導き出される花粉症の外癰は、生体の内側の血が、活動的になって、体の外側にまで、活動状況が表現される過程で、何らかのトラブルがあるために、正常な「表現」反応にならないために、花粉症という状態になると考えられるのです。
漢方では、原因を固定化することはありませんので、冬から春に生体の活動レベルと、防衛反応の関係バランスがうまくいかないのであれば、秋に、夏にとさかのぼって、何らかの問題点があったのではないかと、掘り下げていきます。
また、「涙、鼻水」など、体液に関して漢方的に症状を分類することで、、具体的な治療点を探し出す手がかりとします。
その他にも、眼の痒み、皮膚の寒熱、赤みや干燥、集中力の減退や重ダルイなど精神的な症状も含めて、漢方的に分類していく中で、体質を見極めていくことになります。
防衛能力は、親から受け継いだ先天的なものと、経験蓄積に応じて後天的に獲得した、物とに大きく分けることができます。
後天的なものとは、摂取した食べ物、過ごした生活、様々な経験全てが蓄積されて、得とくした能力と言うことになります。
生れ落ちた時に両親から受け継いだ先天的な要素はなかなか変えようがありませんが、後天的な要素、つまり花粉症であれば夏や秋、冬にどんなものを食べて、どのように生活し、身体だけでなく、メンタル面も含めて、冬から春に変化する対応能力が獲得できているかどうかが、問題になります。
能力が発揮できない=後天的な要素が足りていないということを意味しています。
上記を総合して考えると、毎年毎年、花粉症になると言うことは、長年にわたって、発揮すべき防衛能力が働けていないことを表しているのです。
したがって、花粉症を治癒させるためには、足りていない食生活の充実や、生活スタイルの改善などを、1年2年と言うスパンで改善し、体質を変えていく必要があります。
症状が現れる春は、三焦の調整をメインに行います。
三焦の調整を行うことで、水分代謝のコントロールを行い、症状として現れている鼻水や眼の痒み、涙が止まらないなどを抑える治療を行います。
一時的に数日程度症状の改善が見られても、この種の治療で、花粉症が根本的に治癒することはありません。
適切な防衛能力が働けない理由には、もちろん先天的な要素がないとは言えませんが、食の良質、体調管理の問題を始めとする「後天の精の不良」によって、引き起こされることが非常に多いのです。
花粉症は基本的にそのような理由で、体の内側「陰」が冷えているものですから、長期に渡って体を温める治療を、続ける必要があります。
また、当然ながら季節に合わせて食生活を見直し、体を冷やす飲食物を避けることも重要な要素になります。
ですので、本治という考え方では症状の出ていない夏や秋にも来院されて、体質改善プログラムを組むことが理想的です。