【線維筋痛症の鍼灸】
線維筋痛症(せんいきんつうしょう、英: Fibromyalgia:略FM)は、全身に激しい痛みが生じる病気です。
当院にも時折、この病気に罹患した患者様が来院されます。
日本線維筋痛症学会による『線維筋痛症診療ガイドライン2013』によると「エビデンスに基づく薬物治療(海外の事例を含む)」の章が設けられ、エビデンスと推奨度(欧米)および推奨度(本邦)の形で、各薬物の評価が示されています。
→エビデンスIで推奨度A(本邦では推奨度A)が最良。
それによると鍼治療はエビデンスⅡaであり、推奨度B(本邦では推奨度B)と言うことになっています。
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薬物治療では、海外で推奨度が低くても日本では使われていたり、副作用が報告されているなど、まだ確立された治療手段はないようです。
鍼灸は自律神経の調整作用があり、鎮痛作用もあります。
副作用がないため安心です。
お気軽にお問い合わせください。
線維筋痛症は原因不明の全身の疼痛を主症状とし不眠、うつ病などの精神神経症状、過敏性腸症候群、逆流性食道炎、過活動性膀胱などの自律神経系の症状を随伴することが多いです。
ドライアイやドライマウス、逆流性食道炎などの粘膜系の障害を併発しやすいのも特徴です。
原因は不明で患者は、男性より女性の方が非常に多いです。
中高年に発生率が高いようです。
昨今血液による診断法の確立のために、日本でも研究が進められています。
疼痛レベルや痛みの種類は天候や気温に湿度、環境、五感による刺激、肉体的精神的ストレスで変化します。
視覚、聴覚(聴覚過敏)、触覚、味覚、嗅覚の五感が著しく過敏になる。
そのため僅かな音や光、軽い接触にも痛みを感じるようになる。
化学物質やアルコール不耐性になり、アレルギー症状は悪化するなどが上げられます。
灼熱感や冷感、悪寒、穿痛感(刺されるようなチクチクする痛み)、乱切痛、アロディニアなどの知覚異常が見られる場合もあります。
多くの患者に筋力と運動能力の著しい低下、筋肉の激しい疲労、筋肉の痙攣、行動力の低下、関節の痛みと腫れ、重度では自力で補助なしには立ち上がれないし起き上がれない、以前歩けた距離が歩けなくなるなどの症状が見られます。
特に強直性脊椎炎や血清反応陰性脊椎関節炎の患者が合併症として線維筋痛症を罹患している頻度が高いことが知られ始めており、脊椎関節炎における多発性付着部炎の箇所と線維筋痛症の圧痛点の多くが一致するとも言われています。
むずむず脚症候群を、70.7%の患者で併発し、そのうち約20%が重症であったとの報告があります。
多くの場合は精神症状は疼痛の緩和とともに改善されます。
これは痛みが線維筋痛症の主因であり、精神症状が主因ではないことを意味しています。
他の多くの疾患と同様に、遺伝的素因がみられます。
遺伝以外の発症要因はトリガーとも引き金とも呼ばれ、線維筋痛症の状態に至るきっかけの出来事のことです。
発症要因としては、外的要因と内的要因に分けられます。
外的要因としては、外傷、手術、ウイルス感染など。
内的要因としては、離婚・死別・別居・解雇・経済的困窮などの生活環境のストレスが挙げられています。
他のトリガーとして、抜歯などの歯科処置、脊椎外傷や手術、むちうち症など著しい身体障害やパニック障害が挙げられています。
進行すると、18箇所の圧痛点を上回り、身体全体に激しい疼痛が拡散し、腱の付着部炎や、筋膜、関節等に及びます。
自動車事故後の外相とストレスの混合や、昨今子宮頸がんの副作用としての症状が話題となっています。
自動車事故が引き起こす線維筋痛症は、患者全体の3割を占めるとも言われています。
子宮頸がんワクチンが引き起こす線維筋痛症様の症状をまとめて、難病治療研究振興財団により、HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)という名称が提唱されています。
外的発症要因としてのウイルス感染の他に、線維筋痛症の患者の何割かで、複数種のマイコプラズマ感染がみられたという報告があります。
■線維筋痛症の重症度(ステージ)
ステージⅠ 米国リウマチ学会分類基準の18箇所の圧痛点のうち11箇所以上の痛みであるが、日常生活に重大な影響を及ぼさない 44.0%
ステージⅡ 手足の指の末端部に痛みが広がり、不眠、不安感、うつ状態が続く。日常生活が困難 31.0%
ステージⅢ 激しい痛みが持続し、爪や髪への刺激、温度・湿度変化など軽微な刺激で激しい痛みが全身に広がる。自力での生活は困難 9.8%
ステージⅣ 痛みのために自力で体を動かせず、ほとんど寝たきり状態に陥る。自分の体重による痛みで、長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない 9.1%
ステージⅤ 激しい全身の痛みとともに、膀胱や直腸の障害、口の渇き、目の乾燥、尿路感染など全身に症状がでる。通常の日常生活は不可能 6.1%
■線維筋痛症の分類基準(ACR1990)[29]
1. 広範囲にわたる疼痛の病歴
定義 広範囲とは右・左半身、上・下半身、体軸部(頚椎、前胸部、胸椎、腰椎)
2. 指を用いた触診により、18箇所の圧痛点のうち11箇所以上に疼痛を認める
定義 両側後頭部・頚椎下方部・僧帽筋上縁部・棘上筋・第2肋骨・肘外側上顆・臀部・大転子部・膝関節部
指を用いた触診は4kgの力で押す[30](術者の爪が白くなる程度)
圧痛点の判定:疼痛に対する訴え(言葉、行動)を認める
判定 広範囲な疼痛が3ヶ月以上持続し、上記の両基準を満たす場合。第二の疾患が存在してもよい。