残暑が続いていたかと思えば、ここ数日は急に涼しさを感じるようになってきました。
朝晩は過ごしやすくなり、「ようやく秋らしくなってきた」と感じる方も多いのではないでしょうか。
夏の前には、「暑さに体を慣らしていかないと熱中症になりやすい」という話を耳にした方も多いと思います。
いわゆる暑熱順化ですね。暑くなる季節に向けて、体が少しずつ汗をかけるようになり、熱を逃がしやすい状態を作っていくことはとても大切です。
でも実は、この「季節に体を慣らしていく」という働きは、夏に向かう時だけではありません。
夏から秋に向かって気温が下がっていく過程でも、体はきちんと切り替わっていく必要があります。
この切り替えがうまくいかないと、思っている以上に体調を崩しやすくなります。
よく「スポーツの秋」と言いますよね。
これは気候が良くなって動きやすいという意味もありますが、体の仕組みから見ても理にかなっている部分があります。
なぜかというと、体の熱を作る主役は筋肉だからです。
夏の間、私たちの体は「熱をためない」方向に働いています。
体温が上がれば汗をかき、毛細血管を開いて、体の表面に血液や体液を集め、外に熱を逃がしやすくします。
これは暑い季節を乗り切るためにとても大切な反応です。
つまり夏の体は、どちらかといえば熱を外へ逃がすモードになっています。
ところが秋に向かって気温が下がってくると、今度は逆に、体の中で熱を作り、冷えすぎないようにする働きが必要になります。
この時に大切になるのが筋肉の働きです。筋肉がしっかり働くことで熱が生まれ、体は内側から温まりやすくなります。
そのため、スポーツや散歩、軽い運動などで体を動かし、筋肉の働きを活性化していくことは、季節の移ろいに合った自然な寒さ対策にもなります。
反対に、この切り替えがうまくいかないとどうなるでしょうか。
まだ体が夏のまま、熱を逃がす方向に偏っていたり、筋肉の働きが落ちて熱を作れなかったりすると、
手足が冷える
体がだるい
肩がこる
腰が痛い
急に動いてぎっくり腰になる
めまいがする
気分が落ち込みやすい
といった不調が出やすくなります。
こうした症状は、単なる気のせいではなく、季節の変化に体の調整が追いついていないサインとして見ることができます。
現代医学的にいえば、自律神経の働きがうまく切り替わらず、体温調節、血流、筋肉の緊張、気分の安定などに影響している状態と考えることができます。
実は東洋医学、漢方医学では、こうした季節の変化と体の反応の関係がとても細かく考えられています。
秋になって気温が下がってきているのに、体がまだ夏のように開きっぱなしで、汗をかきやすく、熱を逃がし続けている。
あるいは、外の寒さに対してうまく体を守れず、冷えが内側に入りやすくなっている。
そうした状態を脈やお腹、体表の緊張、汗のかき方などからみていくのが、東洋医学的な見方です。
そのため、漢方理論に基づいて鍼灸を行う時には、単に「肩こりにはこのツボ」「腰痛にはこのツボ」と機械的に決めるのではなく、今の季節に対して体がどう反応しているかを意識しながらツボを選んでいきます。
たとえば、涼しくなってきているのに汗をかきやすく、体の表面が開きすぎているような状態であれば、体を必要以上に冷やさないように整える方向で考えます。
脈診などを通して、まだ夏の反応が強く残っているようであれば、その開きすぎた状態を少し引き締めるような考え方で施術を組み立てます。
逆に、冷えが強く、巡りが悪くなっているようであれば、温める力や巡らせる力を助けるように整えていきます。
現代医学の言葉に置きかえれば、こうした働きは自律神経のバランスを整えるという説明に近い部分があります。
もちろん東洋医学の考え方と自律神経は完全に同じものではありません。
ですが、東洋医学でいう「気の巡り」や「気を整える」という発想は、現代的にいえば、体温調節や血流、緊張と弛緩の切り替え、気分の安定といった、体の自動調整機能を整えることに通じる面があります。
季節の変わり目は、体にとって小さな負担が積み重なりやすい時期です。
「なんとなく不調だけれど、はっきりした病気ではなさそう」
「冷えやだるさが抜けない」
「動き始めると腰や肩がつらい」
そんな時こそ、体が次の季節へうまく切り替わる手助けが必要なのかもしれません。
青熊宇都宮治療院では、こうした季節ごとの体の変化を大切にしながら、その方の状態に合わせて鍼灸を行っています。
残暑から秋への切り替わりがうまくいかず、不調を感じている方は、どうぞ無理をしすぎず、一度ご相談ください。
季節に体を合わせていくことも、元気に過ごすための大切な養生の一つです。