鍼灸は経験医学、伝統医学と言われておりまして、作用はよく判らないけれども効果があると言うものが多いわけです。

鍼灸で不妊症や不育症、妊娠中の不調に使用する穴をまとめてみました。

それを体系化したものが漢方理論であったりするのですが、科学的な研究成果が伝統的な医学の裏づけとなることがあります。

今回は習慣性流産のメカニズムの一分が解明されつつあるとのニュースです。

日経新聞より引用→
習慣性流産、原因の一端解明 京大など たんぱく質が関係

京都大の水岸貴代美研究員らと足立病院(京都市)は29日、流産や死産を繰り返す習慣
性流産(不育症)の原因の一端を解明したと発表した。マウスと人の細胞を使った実験
で、たんぱく質の一種ができないのが病気の原因だと分かった。

習慣性流産は妊婦の3~5%に起きるといわれ、予防策の開発につながると期待される。

習慣性流産は染色体異常などで起きるケースもあるが、患者の半数以上は原因不明で
有効な治療法がない。

水岸研究員らは免疫にかかわるたんぱく質ができなくなった遺伝子組み換えマウスで実験した。

このたんぱく質は母親の胎内で白血球の一種である「好中球」の攻撃から胎児を守る働きを持つ。

このたんぱく質がなくなると、胎児が攻撃を受けてほぼ確実に流産が起きていた。

マウスの実験で好中球の働きを防ぐ抗体などを投与したところ、流産の確率が6割まで下がった。さらに人の細胞でも同様の効果を確認した。

免疫にかかわるたんぱく質ができず習慣性流産を起こす患者の割合は分からないが、このたんぱく質の生産を促す薬を開発すれば治療に役立つ可能性がある。

→引用終わり。

このニュースが鍼灸と何が関係あるかと思われるかもしれません。

お灸は異種蛋白療法の一つです。

皮膚に強い熱が加わることで、皮膚の蛋白質が変成し、血液中に吸収され、免疫反応を引き起こします。

結果として白血球の増加や、免疫機能の向上が期待できます。

さて、この異種蛋白ですが、自分自身の細胞が熱で変質したものですので、基本的に無害であり、非常に都合が良いのです。

昔から自己免疫疾患にはお灸が効果的と言われてきました。

冷えを改善するとか、血流を改善するとか、ツボを刺激するとか、さまざまに表現されてきましたが、私は異種蛋白が体内に吸収される効果があると考えています。

なぜなら、この記事で紹介されている習慣性流産もそうなのですが、多くの自己免疫疾患の根元にあるものは、蛋白質です。

リウマチや喘息などの自己免疫疾患には伝統的に鍼灸が効果を発揮してきました。

伝統医学の研究と言うのは、手法としてすでに確立されているので、あまり盛んに行われません。

ですけれども、新しく発見されたメカニズムと、伝統的医学のすり合わせは重要なことであり、それを患者さまにフィードバックすることが、われわれ針灸を志す者の責務だと考えています。

当院では伝統的なお灸の手法である、皮膚の上で直接行うお灸を行っています。

このお灸は市販の台座付きのお灸と違い、直接熱が皮膚に伝わるため、皮膚の蛋白質が変性しやすく、異種蛋白療法としての効果が高まります。

必要に応じて、患者様自身で自宅灸を行えるように、レクチャーをしています。

詳しくはお気軽にお問い合わせください。

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