【タイミング療法と鍼灸】

不妊症や不育症の患者様に使用する鍼灸の穴をまとめてみました。こちら

タイミング療法に合わせて鍼灸を行いたいと言う患者様がしばしら来院されます。

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女性の排卵日はおおよそ月に1回で、しかも授精可能な時間は6~8時間と言われています。

排卵日をきちんと特定しましょう。

夫人体温計を活用し、加えて排卵検査薬を使うことをお薦めします。

医療機関で排卵日を特定してもらうことも有効ですが、医療機関は休日に診察ができなかったり、都合が合わなかったりすることもありますので、ご自身が理解することが重要です。

精子は、3~4日生きながらえます。月に一度の授精可能な時間に、精子がたどり着いていることが、タイミング療法の条件です。

性行為で射精された精子は、子宮口から入って子宮頸管を通って子宮腔に入り卵管へと進みます。

そして、卵管采で卵子と出会います。

精子が子宮内を進むスピードは1分間に2~3mmほど。

精子が卵管采まで到達する距離を人間の大きさに当てはめると約300kmで、東京-名古屋間の距離に匹敵すると言うことです。

精子と卵子が合体・融合して受精卵となります。

受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、卵管を進みます。

受精から4~6日間かけて細胞分裂をし続け、成長し「胚盤胞」となり、子宮腔内にたどり着きます。

そして、子宮内でプカプカと浮かびながら子宮内膜に着床するタイミングを見計らっています。

受精してから着床するまでの日数は約7日間です。

着床開始から完了するまではだいたい5日かかります。

精子が欄干にたどり着けなかったり、欄干が閉塞していて、排卵障害があったりすると、タイミングを取っても授精できませんので、体外受精が必要となります。

 

「鍼灸を行うタイミングは」
お灸は毎日やってください。

ご家庭でかんたんにできるせんねん灸や、当院で推奨している直接灸を行っていただいています。

どこに行うかは時期によって違いますので、施術時にお伝えします。

A. 排卵日付近
骨盤内や脳内血流を増やすための鍼灸を行いますので排卵日付近に来院をお願いしています。

体温はできるだけ上がる方向性の経絡「ツボ」を洗濯します。

排卵期(排卵日の前後の数日間)は、卵巣内の成熟卵胞から卵子を排卵し、黄体を作り、低温期(卵胞期)から高温期(黄体期)へ移行させる時期です。

排卵期にはホルモン分泌の切り替えを意識した鍼灸を行う必要があります。

排卵後の卵胞は「黄体」となり、「黄体ホルモン(プロゲステロン)」を分泌します。

「黄体ホルモン」は子宮を着床に適した状態に整える働きをします。

ですので、体温を上げ、積極的に血流状態を良くするための、家庭内でのお灸を支持します。

B. 着床日付近
体外受精では移植後24時間以内に鍼灸を行うと、着床確率が上がることが研究結果から知られるようになりました。

と言うことは、タイミング療法でも着床前に鍼灸を行うことで、確率が上がると言うことになります。

排卵日から6日目付近に、鍼灸を行うことを当院はお薦めしています。

黄体期(排卵日後約2週間)は、子宮内膜に再生された分泌腺の働きにより、栄養素に富んだ

分泌液(子宮ミルク)を蓄え、受精卵が着床・発育しやすい環境を整える時期です。

黄体ホルモンの作用により、子宮内膜への血液の供給が加速し、エネルギー代謝が高まるため、基礎体温が月経期・卵胞期より0.3~0.5℃高くなります。

安定した高温期を維持し、受精卵の着床・発育を助けるために、体温を継続的に上げるための経絡「つぼ」に鍼灸を行います。

体温が上がりにくい場合、施術回数を増やす場合があります。

また子宮内膜を意識した、仙骨後部などの刺激をすることで、内膜の発育と血行促進を目指します。

激しい運動はNGです。

C. 高温期が終わって生理が始まったら
月経期(生理がはじまってから出血がなくなるまでの3日間~1週間)は、不要になった子宮内膜を剥がし、溶かして月経血として体外に排出する時期です。

体温は下がり、排出を意識した経絡「ツボ」を選択します。

基礎体温が低すぎる場合は、必ずしも体温を下げる鍼灸は行いません。

基本的に、血流は促進される必要がありますので、骨盤内と関連の強い経穴「ツボ」は使用します。

D. 生理が終わって卵胞を育てる時期
卵胞期(月経期後の1週間~10日間)は、子宮内膜の新しい粘膜層を再生・増殖させる時期です。

卵巣内では卵が成熟します。

子宮内膜や、質の良い卵が成長するために、栄養吸収や、運化を意識した鍼灸を行います。

上記のように、周期によってテーマ性の違うポイントに沿った鍼灸を行いますが、人の体質はみなさん違いますので、基本的にはオーダーメイドと言うことになります。

1週間に1度くらいの鍼灸をお薦めしているのは、周期が変わる時期が、1週間でおおよそ変わっていくからです。

地道に体質改善を行いましょう。