悪阻と言うのは千差万別で、食べ悪阻であったり、吐き悪阻だったり、極端な偏食になったり、臭いに敏感になったり、感情が不安定になったりと、定型的な症状がないと言うのが、難しい所です。 ホルモンの一種であるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が関係しているとの説[と、 妊娠で体質がアルカリ性から酸性に変わることでおこるなどの説がありますが、医学的に解明されていないようです。 心理的な要因にも大きく左右されるとの説もありまして、これについては肯ける部分もあります。 私の妻は、よせばよいのに、朝からワイド賞なんかを見て、永遠と殺人事件だの、災害の犠牲者だのの番組に汚染されて、体調を崩していました。 気になって仕方がないから見てしまうと言うのですが、見れば見るほど気分が悪くなると言うのです。 うつ病の患者さんなんかにも言えるのですが、テレビは一方通行の情報ツウるですので、見たくない物も入ってくる危険なものでもあります。 不安定な精神状態の時に、そのような物を見て、良いことは一つもありません。 テレビを見なくても死にはしませんので、余計なものを排除した方がよいでしょう。 医心方と言う、日本最古の医学書にも、つわりについて多くの記述があるのですが、精神衛生上よろしくない物を見たり、聞いたりすることのないように、戒めています。 はるか昔から、つわりと心の安定については、認識されていたのです。 さて、当院には多くの不妊症の患者様がいらっしゃるのですが、ホルモン治療を併用している方の中に、悪阻に似た症状を訴える方が一定数存在します。 おそらくはHCGとも何かしらの関連があるのでしょう。 そして、いくつかの症状の共通点を考えると、ホルモンを初めとした身体のバランスの崩れから生じる、脳内での抑制が効かない状態が、悪阻の原因となっているのであろうと言うことが、推察されます。 脳血流量などをきちんと図って、妊娠初期と妊娠していない女性を比較すれば、おそらく脳のどこかに、機能的な興奮を示すデータが示されるのではないかと思われるのですが、調べればどこかの大学で研究がなされているかもしれないですね。 例えば臭いに敏感になると言うことは、臭いを感じないように抑制的に働いていた物が、機能的に働きにくくなっている訳です。 臭いと言うのはそもそも慣れるもので、なれるための機能が脳に備わっているのです。 自分の体臭は感じないですよね。 臭いがあっても、その感受性が抑制的に働くから、自分の体臭は感じなくなる訳ですが、抑制的に働けなくなると、体臭だけでなくいろんな臭いが気になってしまうのです。 これは臭いにかかわらず、味覚であってもそうですし、空腹感を感じて極端に唾液や遺産が出てしまうこともそうですし、普段なら何のこともないようなテレビの映像が、心を痛める原因ン位なったりするのもそうなのです。 私のつまらないイライラが、妻にとってはすさまじいストレスで、ちょっと言葉を荒げると、トイレにすっとんでいって、ゲーゲーやるのも、平常時とは違う心の抑制が効かない状態のためなのです。 おそらく脳内のホルモン中枢が活性化することと、刺激に対して抑制的に働く中枢とに、何かの関連があるのでしょう。 ですので、感情や性格が千差万別であるように、つわりの症状も千差万別なのです。 悪阻の鍼灸は、効果的なのですが、鍼灸が効かないタイプの患者さんも一定の割合で存在します。 人の心は簡単に変えられませんので、そうした部分で一定割合の効果になってしまうのだろうなと、考えている処です。 そもそもが妊娠していることそのものが、原因である訳ですから、対症療法的になります。 その上で、当院が心がけていることは、消化器系の痛みや不調をできるだけ改善すること。個々に合わせた生活のアドバイスと、精神的な不安を緩和するためのカウンセリングです。