漢方理論の心臓は神明を司るとされています。 ここで言う神は、以前にも記しましたが宗教上の「神様」ではありません。 神は混沌から宇宙が生じるときに働く霊妙な物であり、陰陽に気が始まりであるとされています。 神明とは、この神の働きが滞りない状態で、宇宙全体にその霊妙な働きが行きわたっている様を言うのです。 ここでは人間の生体の話ですので、心臓は人が生きていくために必要な霊妙な力を、最大限発揮させるための根本となる重要な働きをしており、その働きは体の隅々までいきわたっていなければなりません。 これを神明を司ると表現したのです。 また心臓は「君主の官」と称すると言われています。 なぜ君主たるかと言うと、感情を統合し、血脈を司ると言う役割をなしているからです。 漢方理論では五臓に「五神、五魂」があると考えられており、心臓には「神」が宿るとされています。 この神は、広義には霊妙なものですが、この「五臓の神」は、CPUのような働きと考えてよいようです。 基本的には感情や情緒の源泉である「神」は、他の五臓の感情情緒を、恣意的な介在をせずに、発露させます。 発露させるための統合作業を、即座に行うことが君主たる心臓の役割で、その表情は顔に現れるとされています。 顔の色つやは、心臓の働きの良しあしと関連付けられています。 また君主たる心臓の働きのもう一つである、血脈の支配は、全身に血液を行きわたらせるものであり、漢方では実質臓器の心臓だけでなく、血管を初めとする循環器系を大まかに心臓と考えています。